昭和の経済成長の分析

昭和の経済成長の分析

経済の動向は、性格の異なるつぎの三大要因の重合によって形成される。

 

@経済成長力の長期的カープの地位、
A景気の短期。中期的波動の地位、
B政策的要因。

 

しかるに最近の景気観は、もっばらAとBを中心とし、@を無視しているかのようだ。ところで私見では、この際Lしては、@の地位をどうみるかが、最も根幹的ポイントだと思う。換言すれば、この際@を抜きにした経済展望では真相はつかみがたい。

 

さらに、A、Bの要因についても、ややもすれば過去のそれを尺度にした見方に陥りがちであるが、ここにも大きな変質が顕現化している。要するに、現在の経済展望の仕法につき、この際根本的再吟味が必要だと思う。

 

ところで最近現われている景気論は、金融引締めがどれだけ効果を現わしたかという角度から、もっばら展開されている傾きがある。これは金融引締め緩和がどれだけ、いつ始動されるか、という当面の関心事に焦点を合わせた見方であって、国民経済の真の動向をみきわめる行き方では必ずしもない。

 

 

金融要因以外の設備投資や物価の鈍化までも、金融引締め効果に混入する恐れが多いからである。とともに、それでは正しい金融政策の判断を誤らせることにもなる。ここでの最大重点は、設備投資抑圧政策を必要だとするつぎの発想法そのものの正否である。

 

それは四三―四四年の設備投資やGNPの増加率が続けば、わがGNPは四、五年で倍増する、それは明らかな行過ぎだからこれを抑圧せねばならぬとする発想法である。

 

先に@の経済成長力の長期的カーブの現地位を知ることが、この際の最も根幹的ポイントであると強調するわけはここにある。顧みるに戦後、特に三〇年前後以降のわが経済の超高度成長は、もっばら童化学工業の飛躍的発達によるものだ。それが可能であったのは、これまで重化学工業の処女地に近かった(発達余地がきわめて大きかった)日本に、発達の条件が新たに備わったからである。

 

そうした性格の経済成長は、ある段階までは設備投資そのものが新たに有効需要を創造して加速的高成長を可能にする(一九六〇年代まではまさにその段階であった)。しかしその発達が一定の成熟段階に近づくと、その発達力は漸次に減速し、鈍化しはじめるものである。それはあらゆる成長に共通する原理である。